Japanische Klassiker mit Furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
もういくら待っても人通りはない。長吉は詮方なく疲れた眼を河の方に移した。河面は先刻よりも一体に明くなり気味悪い雲の峯は影もなく消えている。長吉はその時長命寺辺の堤の上の木立から、他分旧暦七月の満月であろう、赤味を帯びた大きな月の昇りかけているのを認めた。空は鏡のように明いのでそれを遮る堤と木立はますます黒く、星は宵の明星の唯た一つ見えるばかりでその他は尽く余りに明い空の光に掻き消され、横ざまに長く棚曳く雲のちぎれが銀色に透通って輝いている。見る見る中満月が木立を離れるに従い河岸の夜露をあびた瓦屋根や、水に湿れた棒杭、満潮に流れ寄る石垣下の藻草のちぎれ、船の横腹、竹竿なぞが、逸早く月の光を受けて蒼く輝き出した。忽ち長吉は自分の影が橋板の上に段々に濃く描き出されるのを知った。通りかかるホーカイ節の男女が二人、「まア御覧よ。お月様。」といって暫く立止った後、山谷堀の岸辺に曲るが否や当付がましく、
※(歌記号、1-3-28)書生さん橋の欄干に腰打かけて――
と立ちつづく小家の前で歌ったが金にならないと見たか歌いも了らず、元の急足で吉原土手の方へ行ってしまった。