Japanische Klassiker mit Furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
梯子段の二、三段を一躍びに駈上って人込みの中に割込むと、床板の斜になった低い屋根裏の大向は大きな船の底へでも下りたような心持。後の隅々についている瓦斯の裸火の光は一ぱいに詰っている見物人の頭に遮られて非常に暗く、狭苦しいので、猿のように人のつかまっている前側の鉄棒から、向うに見える劇場の内部は天井ばかりがいかにも広々と見え、舞台は色づき濁った空気のためにかえって小さく甚遠く見えた。舞台はチョンと打った拍子木の音に今丁度廻って止った処である。極めて一直線な石垣を見せた台の下に汚れた水色の布が敷いてあって、後を限る書割には小く大名屋敷の練塀を描き、その上の空一面をば無理にも夜だと思わせるように隙間もなく真黒に塗りたててある。長吉は観劇に対するこれまでの経験で「夜」と「川端」という事から、きっと殺し場に違いないと幼い好奇心から丈伸びをして首を伸すと、果せるかな、絶えざる低い大太鼓の音に例の如く板をバタバタ叩く音が聞えて、左手の辻番小屋の蔭から仲間と蓙を抱えた女とが大きな声で争いながら出て来る。見物人が笑った。舞台の人物は落したものを捜す体で何かを取り上げると、突然前とは全く違った態度になって、極めて明瞭に浄瑠璃外題「梅柳中宵月」