Japanische Klassiker mit Furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lesen Sie すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.378 Zeichen · 88 Bildschirme
長吉は何処も同じような貧しい本所の街から街をばてくてく歩いた。近道を取って一直線に今戸の家へ帰ろうと思うのでもない。何処へか廻り道して遊んで帰ろうと考えるのでもない。長吉は全く絶望してしまった。長吉は役者になりたい自分の主意を通すには、同情の深い小梅の伯父さんに頼るより外に道がない。伯父さんはきっと自分を助けてくれるに違いないと予期していたが、その希望は全く自分を欺いた。伯父は母親のように正面から烈しく反対を称えはしなかったけれど、聞いて極楽見て地獄の譬を引き、劇道の成功の困難、舞台の生活の苦痛、芸人社会の交際の煩瑣な事なぞを長々と語った後、母親の心をも推察してやるようにと、伯父の忠告を待たずともよく解っている事を述べつづけたのであった。長吉は人間というものは年を取ると、若い時分に経験した若いものしか知らない煩悶不安をばけろりと忘れてしまって、次の時代に生れて来る若いものの身の上を極めて無頓着に訓戒批評する事のできる便利な性質を持っているものだ、年を取ったものと若いものの間には到底一致されない懸隔のある事をつくづく感じた。
何処まで歩いて行っても道は狭くて土が黒く湿っていて、大方は路地のように行き止りかと危まれるほど曲っている。