Japanische Klassiker mit Furigana
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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.182 Zeichen · 48 Bildschirme
春宵綺談
或る晩、私は倶楽部でたったひとりテーブルに肘を突いたままひどくふさぎ込んでいる佐藤春夫の横顔を見た。そこで私は彼に近づいて、晩春のこんな美しい夜をどうしてそんな顔つきをしているんだと尋ねた時に、彼は少しばかり風変りな話を私に聞かせた――
……その停留場に私は立っていた。つい一週間ほど前のある夕方のことなのだが。
と見ると、私の二間ほどさきのところに年のころ二十七八というひとりの美装した婦人がやっぱり電車を待っている。美人だったろうと思う。が私の見たのはうしろ姿だけだ。それにしても何というあでやかさであろう。と見ていると、突然、そのおしりのところへ紫色の夕闇のなかにフレンチバアミリオン色の?が、しかも三つ※こういう具合に並んでありありと私の目に見えて来たのである。初はうっすらとしていたが、見つめているうちに実にあざやかになって来た。私はそれを凝と見据えていた。それでもその※は消え去らなかった。
そのうちに電車が来て、その婦人は事もなげに電車へ乗ってしまった。が、私はぼんやり取り残された。私は※をあんまり注視していたものだから電車へ乗りそこねてしまっていた。