Japanische Klassiker mit Furigana
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たちあなひめ
たちあな姫
菊池 寛
Lesen Sie たちあな姫 (たちあなひめ) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.540 Zeichen · 21 Bildschirme
「判って居るじゃないか。」と、私は前と同じような、険しい声を出しました。すると、
「あゝもし/\木村さんですか。」と、云う夜の編輯の佐藤君の声が聞えました。
「急用と云うことですが、一体何です。」と、私の声は可なり荒々しく切口上でありました。
「何うも、お呼び出して済みません。」と、佐藤君は何時もよりも鄭重な言葉で謝りながら「実は今夜の八時半に、露国の廃帝の皇女のタチアナ姫が、東京駅へ着くのですが、甚だお気の毒ですが、之から一つ行って下さいませんか。」と、云いました。私は、それを聞くと、何だ馬鹿々々しいと思いました。尤も二三日前から、西伯利亜のトボリスクに幽閉されて居た廃帝の皇女のタチアナ姫が、トボリスクを脱出して、米国へ渡る為に、日本へ向うと云う電報が、ハルピンや長春から二三通来て居ました。が、それは荒唐無稽な流言に近いものと見做されて居ましたが、その日の前日には、つい手近の京城から、やっぱり同じ意味の電報が来ましたし、その日の午前には下関から『タチアナ姫は露廃帝らしき人物と共に、只今当地通過、今夜午後八時半東京駅着の汽車にて東上せり。』と云う電報が来て居たので、若しかすればと云う疑はあったのです。