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Japanische Klassiker mit Furigana

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だいこん

だいこん

久生 十蘭

Lesen Sie だいこん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 153.732 Zeichen · 303 Bildschirme

Aozora Bunko

墓地の草の葉を撫でていく湿った海風は誰のためだろう? 潮騒のような風の音、滲みだすようにひびいてくる爆音は誰のためだろう? それは墓の前に坐っているあたしのためだ。満寿子さんはもうなにも感じない。苦痛もない。満寿子さんのところにあるのは想像もつかないような無限の時間だけだ。

抗戦デモの軽そうな飛行機が一機、夢遊する生命とでもいうような霊性をおびたようすでしずかに東のほうへ飛んで行く。満寿子さんの魂にも羽根が生え、天国の渚をあんなふうにひっそりと飛んでいるのにちがいない。

満寿子さんの大おばあさまは先帝のお乳人で、叔母さまは二人とも女嬬に上っている。八十いくつになっていられた大おばあさまは、五月二十五日の空襲の夜、参宮道路の真中にキチンと坐って、明治神宮のほうへお辞儀をしたままの恰好で焼け死んでいられた。

そういう家に生れたので、Y元帥以来、伝統的に不遜な気風を受けつぎ、宮中を無視したり〈あの方〉のご意志に逆らうことを見栄にして、軍に都合の悪いことでもあると、〈ご退位をねがおう〉などと放言してはばからない陸軍の朋党組織を憎み、日本の〈真の敵〉はアメリカでなく軍部なのよとはっきりいっていた。