Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lesen Sie ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.196 Zeichen · 169 Bildschirme
と彫り、その右に「元文二年巳年」、左に「壬十一月十日」とある。しかし主人はこの位牌についても、何も知るところはないらしい。ただ昔から、大谷家の主君に当る人のものだと云われ、毎年正月元日にはこの二つの位牌を礼拝するのが例になっている。そして元文の年号のある方を、あるいは静御前のではないかと思います。と、真顔で云うのである。
その人の好さそうな、小心らしいショボショボした眼を見ると、私たちは何も云うべきことはなかった。今更元文の年号がいつの時代であるかを説き、静御前の生涯について吾妻鑑や平家物語を引き合いに出すまでもあるまい。要するにここの主人は正直一途にそう信じているのである。主人の頭にあるものは、鶴ヶ岡の社頭において、頼朝の面前で舞を舞ったあの静とは限らない。それはこの家の遠い先祖が生きていた昔、―――なつかしい古代を象徴する、ある高貴の女性である。「静御前」と云う一人の上の幻影の中に、「祖先」に対し、「主君」に対し、「古え」に対する崇敬と思慕の情とを寄せているのである。そう云う上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)が実際この家に宿を求め、世を住み佗びていたかどうかを問う用はない。