Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lesen Sie ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.196 Zeichen · 169 Bildschirme
その五 国栖
ここでは親も狐、子も狐であって、しかも静と忠信狐とは主従のごとく書いてありながら、やはり見た眼は恋人同士の道行と映ずるように工まれている。そのせいか自分は最もこの舞踊劇を見ることを好んだ。そして自分を忠信狐になぞらえ、親狐の皮で張られた鼓の音に惹かされて、吉野山の花の雲を分けつつ静御前の跡を慕って行く身の上を想像した。自分はせめて舞を習って、温習会の舞台の上ででも忠信になりたいと、そんなことを考えたほどであった。
「だがそれだけではないんだよ」
と、津村はそこまで語って来て、早や暮れかかって来た対岸の菜摘の里の森影を眺めながら、
「自分は今度、ほんとうに初音の鼓に惹き寄せられてこの吉野まで来たようなものなんだよ」
と、そう云って、そのぼんちらしい人の好い眼もとに、何か私には意味の分らない笑いを浮かべた。
その五 国栖
さてこれからは私が間接に津村の話を取り次ぐとしよう。
そう云う訳で、津村が吉野と云う土地に特別のなつかしさを感ずるのは、一つは千本桜の芝居の影響によるのであるが、一つには、母は大和の人だと云うことをかねがね聞いていたからであった。が、大和のどこから貰われて来たのか、その実家は現存しているのか等のことは、久しく謎に包まれていた。