Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lesen Sie ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.196 Zeichen · 169 Bildschirme
た事柄は、母に関する二十年来の彼の疑問を解くに足りた。母が大阪へやられたのは、たしか慶応頃だったと婆さんは云うのだけれども、ことし六十七になる婆さんが十四五歳、母が十一二歳の時だったそうであるから、明治以後であることは云うまでもない。それゆえ母はわずか二三年、多くも四年ほど新町に奉公しただけで、じきに津村家へ嫁いだことになる。おりと婆さんの口吻から察するのに、昆布の家は当時窮迫こそしていたものの、相当に名聞を重んずる旧家で、そんな所へ娘を勤めに出したことをなるべく隠していたのであろう。それで娘が奉公中はもちろんのこと、立派な家の嫁になった後までも、一つには娘の耻、一つには自分たちの耻と思って、あまり往き来をしなかったのであろう。また、実際にその頃の色里の勤め奉公は、芸妓、遊女、茶屋女、その他何であるにしろ、いったん身売りの証文に判をついた以上、きれいに親許と縁を切るのが習慣であり、その後の娘はいわゆる「喰焼奉公人」として、どう云う風に成り行こうとも、実家はそれに係り合う権利がなかったでもあろう。しかし婆さんのおぼろげな記憶によると、妹が津村家へ縁づいてから、彼女の母は一度か二度、大阪へ会いに行ったことがあるらしく、今では大家の御料人様に出世した結構ずくめの娘の身の上を驚異をもって語っていた折があった。