Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
Lesen Sie ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.196 Zeichen · 169 Bildschirme
またそうでもなく、嫁いでからも長く島の内の家にあったのを、彼女の遺言か何かによって国元へ届けたとも想像される。が、おりと婆さんも若夫婦も、一向その間の事情に関して知るところはなかった。たしか手紙のようなものが附いていたと思うけれども、今ではそれも見あたらない、ただ「大阪へやられた人」から譲られたものであることを聞き覚えている、と云うのみであった。
別に、附属品を収めた小型の桐の匣があって、中に琴柱と琴爪とが這入っていた。琴柱は黒っぽい堅木の木地で、それにも一つ一つ松竹梅の蒔絵がしてある。琴爪の方は、大分使い込まれたらしく手擦れていたが、かつて母のかぼそい指が箝めたであろうそれらの爪を、津村はなつかしさに堪えず自分の小指にあててみた。幼少の折、奥のひと間で品のよい婦人と検校とが「狐」を弾いていたあの場面が、一瞬間彼の眼交を掠めた。その婦人は母ではなく、琴もこの琴ではなかったかも知れぬけれども、大方母もこれを掻き鳴らしつつ幾度かあの曲を唄ったであろう。もし出来るならば自分はこの楽器を修繕させ、母の命日に誰か然るべき人を頼んで「狐※(「口+會」、第3水準1-15-25)」の曲を弾かせてみたい、と、その時から津村はそう思いついた。