Japanische Klassiker mit Furigana
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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
Lesen Sie とむらい機関車 (とむらいきかんしゃ) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 186.729 Zeichen · 371 Bildschirme
いままで表二階の隅の席で、客の相手をしていた女給の一人は、そこで腰をあげると、ハンカチで襟元を煽りながら窓際によりそって、スリ硝子のはまった開き窓を押しあけたのだが、何気なく前の家を見ると、急に悪い場面でも見たように顔をそむけて、そのまま自分の席へ戻り、それから仲間達へ黙って眼で合図を送った。
煙草屋の二階では、半分開けられた硝子窓の向うで、殆んど無地とも見える黒っぽい地味な着物を着た、色の白い女主人の房枝が、男ではない、女店員の澄子を前に坐らせて、なにか頻りに口説きたてていた。澄子は、いちいち頷きもせず、黙ってふくれッ面をして、相手に顔をそむけていたのだが、黒地に思い切り派手な臙脂色の井桁模様を染め出した着物が今夜の彼女を際立って美しく見せていた。けれども房枝は、直ぐに「青蘭」の二階の気配に気づいてか、キッと敵意のこもった顔をこちらへ向けると、そそくさと立上って窓の硝子戸をぴしゃりと締めてしまった。ジャズが鳴っていてかなり騒々しいのに、まるでこちらの窓を締めたように、その音は高く荒々しかった。
女給達は、ホッとして顔を見合せた。そして互に、眼と眼で囁き交した。