Japanische Klassiker mit Furigana
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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
Lesen Sie はたし状 (はたしじょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.525 Zeichen · 39 Bildschirme
……自分では知らぬうちに、彼はこうして孤独好きな、幾らか狷介でかたくなな人間になっていった。
帰って来た息子を見たとき、母親はああといったきり暫く声が出なかった。
「どうなすったのです、母上、私の顔をお忘れにでもなったのですか」
第二は玄関に立ってそういいながら、努めて母に笑ってみせた。母はかなり老けていた、その母の硬ばったような顔がみるみる歪み、唇がふるえだし、次いでその眼から涙があふれ落ちた。
「ようこそ、第さん、ようこそ……」
御無事でおめでとうという言葉は喉に閊えて出なかった。それだけいうのが精いっぱいで、母は式台に膝をついたまま、咽びあげた。
そんなにも第二は変っていた。あの明るく澄んだ晴れやかな顔が、今は痩せて骨立ってみえる。眼の色は沈んで暗く、眉間には深い皺が刻まれていた。玄関へはいって来た態度も、口のききようも、この家を出ていったときの第二ではない。なにもかも変った、見違えるように変ったのである。……父は登城中であったが、帰って来て第二を見ると、これも強く心をうたれたようすで、眩しそうに眼をそらした。
「庭で薬草の栽培を始めてみたんだが、見て呉れたか」