Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
Lesen Sie ひとでなし von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.484 Zeichen · 38 Bildschirme
五
とおようは囁くように云った、まるで憐れみを乞うような口ぶりであった、「どうぞお願いします、このまま帰って、そしてもう二度と来ないで下さい」
康二郎はおようをじっと眺めていて、それから静かに立ちあがった。するとおようは機先を制するように、手を振りながら「なにも仰しゃらないで」と云った。
「どうぞなにも仰しゃらないで、そのままお帰りになって下さい、どうぞ」
康二郎は蒼ざめた顔をそむけ、茶の間へいって衿巻を持って来ると、それを首に巻きながら、黙って土間へおりた。おようは見向きもせずに、燗徳利を取り、手酌で盃に注ぎながら云った。
「さようなら、お大事に」
五
康二郎は大川端へ出た。時刻は十時をまわったらしい、こっちの河岸もまっ暗だし、対岸の浅草のほうも灯はまばらで、遠くかすかに、夜廻りの拍子木の音が聞えた。
「渡しはもうないな」と彼はふるえながら呟いた、「駕籠をひろうにしても、両国までゆかなくちゃあなるまいな」
風はないが気温は低く、雲があるのだろうか、星も少ししか見えなかった。両国橋のほうへ向って歩きだし、舟渡しのところまで来ると、うしろから「もし旦那」