Japanische Klassiker mit Furigana
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ほととぎす
ほととぎす
堀 辰雄
Lesen Sie ほととぎす von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.252 Zeichen · 60 Bildschirme
その跡で、私は半ば気の抜けたように、そこの簾の下に差し入れられたままになっている殿の御文を破ろうとするのでもなく、手に取って見ると、まあ何とした事か、私は頭の君に御目にかけたくないと思って破ったところを反対にあの方に御目にかけてしまっていたのだった。その上、誤って御目にかけた紙の端が半分ほど更に引きもがれているのに気がついた。私にはすぐ、あの薄月の微かに差している縁先きで頭の君が帰りぎわに何かしきりに口ずさまれて入らしった姿が思い出された。
私はその頭の君に見られた紙片の丁度裏あたりに、あのとき自分で自分を嘲けるように一ぱいに散らし書きをしたままであったのを、それまで忘れるともなく忘れていたのだった。――「いまさらにいかなる駒かなつくべき……」
私はふと口を衝いて出たその文句が自分の胸を一ぱいにするがままにさせながら、なぜか知ら、撫子の悲しい目ざしを空に浮べ出していた。いまにも私に物を言いかけそうにして、しかしすぐに何んにも言うまいと諦めてしまうような、撫子のしおらしい目ざしが、それまでついぞそんな事はなかったのに、その夜にかぎって私の目のあたりからいつまでも離れなかった。