Japanische Klassiker mit Furigana
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めおとちょう
めおと蝶
山本 周五郎
Lesen Sie めおと蝶 (めおとちょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.977 Zeichen · 47 Bildschirme
お姉さま、もういちど勇気をおだしになって、人間は二度とは生きられませんのよ」
信乃は妹に手を取られたまま眼をつむった。良人の顔がみえた。冷酷な眼が、感情のない声つきが、そしてぞっとするような微笑が。信乃はその幻像を思いうかべながら、やがてふと寒気でもするように肩を縮め、
「ありがとう、文代さん、うれしいわ」
こう囁くような声で云った。
「人間は二度とは生きられない、……勇気をだしてみるわ、本当にありがとう」
文代は涙をこぼしながら、その濡れた頬を姉の手にすりつけ、まるで笑うような声で、肩を震わせて噎びあげた。……信乃は瞳孔のひらいたような眼で、じっと空を見あげていた。
それから三日めに午まえから雨が降りだした。
このところずっと気温が高く、今年は雪が少なそうだと云われていたが、その日は前夜からひどく凍て、朝になると空はいちめん雪雲に掩われ、氷ったものがいつまでも溶けなかった。冷えたのだろう、良平は腹が痛むと云って、勤めを休むことにし、役所へ使いをやった。
――今日は降るだろうに、困った。
信乃は当惑したが、はたして十一時まえに雨が降りはじめ、午を過ぎるとかなり強くなって、そうしてその雨のなかを妹がやって来た。