Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまま
わがまま
伊藤 野枝
Lesen Sie わがまま von 伊藤 野枝 (いとうのえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.570 Zeichen · 18 Bildschirme
改札口に近く、まき子の後姿が見えた。傍には世話になった先生や世話焼き役の田中の小父さん等が一緒にいた。小父さんは登志子の顔を見ると昼の汽車に後れたことを彼女のためだといって責めた。登志子の興奮した荒く波立っている心に小父さんの小言は堪えきれない程腹立たしいものだった。自分に小言をいう資格のない人につまらないことをいわれたということが第一に不快だった。彼女は熱した唇を震わして眼にいっぱい涙をためて小父さんといい争った。――
登志子の新しい追憶はずんずん進んでいった。やがてそれが現在そこに、門司の停車場に腰かけている自分にまで返ってきたときにしみじみ彼女は、親しみの多い一番彼女をいたわってくれる、同情してくれる、東京からはなれてきたことを思った。一昨夜だ、そうだった一昨夜まであすこにいた。そしてあの人の顔を見て話をした。あの汽車に乗ったばかりに、こんな処に運ばれてきた。おなじつづいた空の下でおなじ空気を吸っていて――それでもう駄目だ。彼女はボーッとしてしまった。眼がクラクラっとした。
場内が何となくざわめいてきて、身つくろいしたり、落ちつかないような風で改札口の方へのぞきに行ったりする人がたくさんある。