Japanische Klassiker mit Furigana
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わがちち
わが父
宮本 百合子
Lesen Sie わが父 (わがちち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.314 Zeichen · 19 Bildschirme
二年、三年とそれを着て、結婚の話が起るようになって、見合いの写真をとったのが今もあるが、少し色の褪せかけた手札形の中で、角帽をかぶり、若々しい髭をつけた父が顔をこちらに向けて立ち、着ているのは切れるだけ切りちぢめて裾が膝ぐらい迄しかなくなったそのお古外套なのであった。そうと知らずに見ればハイカラだと私たちは大笑いした。
青年時代に日清、日露と二つの戦争を経て、日露戦争前後にはイギリスに数年暮したりした父は、過去六十九年間の日本の経済の発展、変遷と歩調を合わせて、建築家としての経歴を辿って来た。大学を出て役所に入ったのを自分から罷めて、民間の一建築家として活動しはじめた四十歳の父の心持や、その頃の日本の経済的、文化的雰囲気などというものも、私として或るところ迄推察されないこともない。いつの晩だったか、やはり父が安楽椅子に、そして私がその足許にくっついて喋っていたような時、
「だってお父様、日本倶楽部だの何だのでそういう話なんかなさらないの? みんなお歴々なんじゃないの?」
と、訝しく思って訊いたことがあった。その夜の夕刊に出た何か政治的のことであった。