Japanische Klassiker mit Furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lesen Sie わが町 (わがまち) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.840 Zeichen · 186 Bildschirme
ほんにお前は薄情な亭主やぜ。お鶴はんは築港に二階つきの電車が走っても、見に行きもせんと、昼は爪楊子の内職をして、夜はお前、夜店へ出て、うちのくそ親爺め言うて、ぽろぽろ涙こぼしこぼし、七味混ぜたはんねんぜ」
いかにもそれらしい表情で、七味唐辛子を混ぜる恰好をして見せた〆団治の手つきを見るなり、他吉は胸が熱くなり、寒い風が白く走っている戸外へ飛び出した。
谷町九丁目の坂を駈け降りて、千日前の裏通りに出ているお午の夜店へ行くと、お鶴が存外小綺麗な店にちょこんと坐って、ガラス箱の蓋を立てかけた中に前掛けをまいた膝を見せ、赤切れした手で七味を混ぜていた。娘の初枝は白い瀬戸火鉢をかかえて、まばらな人通りを、きょとんと見あげていた。
物も言わずにしょんぼり前に立った。
「おいでやす」
言って見上げて、お鶴は他吉だとすぐ判ったらしく、
「阿呆んだら!」
「御機嫌さん。達者か」
他人にもの言うような口を利くと、もう一度、
「阿呆んだら!」
お鶴は泣いていた。
それが六年振りの夫婦の挨拶であった。初枝は父親の顔を忘れているらしかった。水洟を鼻の下にこちこちに固めて、十一歳よりは下に見えた。