Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
夫婦きりになると二人はまた別々になってせっせと働き出した。日が傾きはじめると寒さは一入に募って来た。汗になった所々は氷るように冷たかった。仁右衛門はしかし元気だった。彼れの真闇な頭の中の一段高い所とも覚しいあたりに五十銭銀貨がまんまるく光って如何しても離れなかった。彼れは鍬を動かしながら眉をしかめてそれを払い落そうと試みた。しかしいくら試みても光った銀貨が落ちないのを知ると白痴のようににったりと独笑いを漏していた。
昆布岳の一角には夕方になるとまた一叢の雲が湧いて、それを目がけて日が沈んで行った。
仁右衛門は自分の耕した畑の広さを一わたり満足そうに見やって小屋に帰った。手ばしこく鍬を洗い、馬糧を作った。そして鉢巻の下ににじんだ汗を袖口で拭って、炊事にかかった妻に先刻の五十銭銀貨を求めた。妻がそれをわたすまでには二、三度横面をなぐられねばならなかった。仁右衛門はやがてぶらりと小屋を出た。妻は独りで淋しく夕飯を食った。仁右衛門は一片の銀貨を腹がけの丼に入れて見たり、出して見たり、親指で空に弾き上げたりしながら市街地の方に出懸けて行った。
九時――九時といえば農場では夜更けだ――を過ぎてから仁右衛門はいい酒機嫌で突然佐藤の戸口に現われた。