Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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カインのまつえい

カインの末裔 クララの出家

有島 武郎

Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme

Aozora Bunko

香奠代りの紙包を持って帳場も来た。提灯という見慣れないものが小屋の中を出たり這入ったりした。仁右衛門夫婦の嗅ぎつけない石炭酸の香は二人を小屋から追出してしまった。二人は川森に付添われて西に廻った月の光の下にしょんぼり立った。

世話に来た人たちは一人去り二人去り、やがて川森も笠井も去ってしまった。

水を打ったような夜の涼しさと静かさとの中にかすかな虫の音がしていた。仁右衛門は何という事なしに妻が癪にさわってたまらなかった。妻はまた何という事なしに良人が憎まれてならなかった。妻は馬力の傍にうずくまり、仁右衛門はあてもなく唾を吐き散らしながら小屋の前を行ったり帰ったりした。よその農家でこの凶事があったら少くとも隣近所から二、三人の者が寄り合って、買って出した酒でも飲みちらしながら、何かと話でもして夜を更かすのだろう。仁右衛門の所では川森さえ居残っていないのだ。妻はそれを心から淋しく思ってしくしくと泣いていた。物の三時間も二人はそうしたままで何もせずにぼんやり小屋の前で月の光にあわれな姿をさらしていた。

やがて仁右衛門は何を思い出したのかのそのそと小屋の中に這入って行った。