Japanische Klassiker mit Furigana
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カストリこうじつろく
カストリ侯実録
久生 十蘭
Lesen Sie カストリ侯実録 (カストリこうじつろく) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.619 Zeichen · 31 Bildschirme
一七九二年八月十日、巴里市民はルイ十六世に退位を迫ってチュイルリー宮を襲撃したので、王族十一人は王宮をぬけだし、庭づたいに翼屋の国民公会へ落ちのびた。
ルイ十六世の第三子、ノルマンディ公ルイ・シャルルは一七八五年にヴェルサイユ宮で生れ、兄(ナヴァール公)が死んだので皇太子になり、そのときちょうど八歳だった。ルブラン夫人の絵で見るとおり、母に似たいかにも美しい面差で、ブロンドの髪が波をうって肩のあたりへ落ちかかっているところなどはさながら少年天使のようだった。
太子は襞飾のある薄紗のシャツに空色天鵞絨の服を着、幅の広い朱鷺色の絹の飾帯を結んでその端を腰のところで垂らし、前の海軍相ド・カストリ侯爵に手をひかれ、母のマリイ・アントアネットと並んでなんの苦もない顔で歩いていた。
巴里の夏は短いが、とりわけその年は秋が早く、八月十日だというのにもう葉が落ち、そんな騒動の中で園丁がひっそりと落葉を掃いていた。ルイ十六世は太子のほうへ振返っていった。
「見てごらん。もうこんなに葉が落ちた」
ある新聞の論説はフランスの王位は今年の秋まで保たないだろうと予言していた。