Japanische Klassiker mit Furigana
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カンカンむしさつじんじけん
カンカン虫殺人事件
大阪 圭吉
Lesen Sie カンカン虫殺人事件 (カンカンむしさつじんじけん) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.237 Zeichen · 21 Bildschirme
屍体の背面には表側と同じ様に、深い擦過傷が所々に喰い込み、労働服の背中にはまだ柔い黒色の機械油が、引き裂かれた上着の下のジャケットの辺りまで、引っこすった様にべっとりと染み込んでいる。そしておよそ私達を吃驚さした事には、後へ廻された両の手首は丈夫な麻縄で堅く縛られ、すっこきの結び玉から何にかへくくり付けた様に飛び出している綱の続きは、一呎程の処で荒々しく千切れている事だ。黒い機械油は、手首から麻縄の上までべっとり染み付いている。
一通りの検屍を終った喬介は、傍の婦人に向って静に口を切った。
『いやどうも失礼いたしました。早速で恐縮の至りなんですが、御主人が行方不明になられた晩の模様をお聞かせ下さいませんか?』
『と言いますと?』
『つまりですな。御主人が最後に家を出られた時の様子です。』
『ハイ。』婦人は涙を拭いながら話し始めた。
『あの晩工場から暗くなってから帰って来た主人は、御飯を食べると急な夜業があるからと言って直ぐに出て行きました。』
『一寸待って下さい。』と喬介は側に立っていた菜葉服の一人に向って、『その晩、夜業は確かにあったんですね?』
『いいえ。