Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.361 Zeichen · 27 Bildschirme
三
小田急の喜多見で降りて、宇奈根町の浄水場を目当てに行くということだったが、その辺は、広い田圃や雑草の原ばかりで、家らしいものもなく、どこでたずね合わすすべもなかった。あちらこちらと散々迷い歩いたすえ、表戸を閉めかけている荒物煙草屋へ飛び込んで、ようやく、そこへ行く道筋をきくことができた。
茜さんがいるという百姓家に行き着いた時は、もう八時を過ぎていた。右手は玉川堤で、水の涸れたひろい河原の向うに、川が銀色に光っていた。
その百姓家は荒畑をひかえた、広い草原の中にポツンと一軒だけ建っていた。藁屋根がくずれ落ち、立ち腐れになったようなひどい破屋だった。柱だけになった門を入って行くと、雨戸の隙間から、チラリと灯影が見える。涙が出るほど嬉しかった。
キャラコさんは、縁側の雨戸のそばまで一足とびに飛んで行って、戸外から声を掛けた。
「ごめんください。……こんばんは」
ちょっと間をおいて、内部から、弱々しい返事があった。
「お産婆さんですか?……かまわず、そこを開けて入ってください」
キャラコさんが、雨戸をガタピシさせていると、また内部から、細い弱々しい、茜さんのつぶやくような声が聞えて来た。