Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.236 Zeichen · 43 Bildschirme
どちらも静かなひとたちで、ときどき、佐伯氏に本を読んできかせるらしい茜さんの澄んだきれいな声がきこえるほか、一日じゅう、ひっそりとくらしていて、部屋の障子がひらかれることさえごくまれだった。
佐伯さんは、まいにち三時ごろになると散歩に出て、湖のそばでフリュートを吹く。まだ習いはじめだとみえ、とぎれとぎれで、なんとなく悲しげだった。茜さんのほうは、めったに部屋からも出て来ない。たまに廊下などですれ違うと、軽く目礼して、眼を伏せて急ぎ足で行ってしまう。不幸の重荷を背負っているような薄倖な感じのひとだった。
キャラコさんは、はじめての日、湖畔から宿のほうへ曲り込むわかれみちのところで佐伯氏に逢った。
佐伯氏は、道からそれた蘆の繁みの中へ踏み込んで、途方に暮れたようすで立っていた。
キャラコさんは、すぐ、眼の悪いひとなのだと気がついて、佐伯氏をていねいに道まで連れ戻し、そのままそろそろと宿のほうへ手をひいて行こうとすると、佐伯氏は、とつぜん、邪険な仕方でキャラコさんの手をふり切って、毒々しい口調で叫んだ。
「いいから、独りで歩かしてください。これから毎日散歩に来なくてはならないのだから、道に馴れておこうと思ってやって来たところなんです。