Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.972 Zeichen · 66 Bildschirme
みな船室へ引きとったと見えて、甲板には人影らしいものもなくて、ひどく広々としている。
キャラコさんは、船尾のほうまで歩いて行って、派手な日除の下の揺椅子の中に沈み込んだ。
膚にさわらぬほどの海風が、気持よくそっと襟のあたりを吹いてゆく。
薄い月の光で、海の面がぼんやりとけむり、古沼のようにはるばるとひろがっている。空には白い巻雲がひとつ浮いていて、眼に見えぬくらいゆっくりと西のほうへ流れてゆく。
キャラコさんは、揺椅子の中でのびのびと身体をのばしながら、巻雲のゆくえを眼で追っているうちに、こんな無意味な感情の狭間の中で当惑していなければならない自分の境遇をばからしくてたまらなくなってきた。
「……他人の気持をいたわるのは大切なことだけど、そのために、じぶんの意志や感情まで投げ出してしまうのは、あまりほめた話ではないわね。……何より、女のやさしさと卑屈とをはきちがえないようにするこったわ。……アマンドさんを恐縮させるのはお気の毒だけど、できるだけ正直にこちらの気持をうちあけて、朝のうちに快遊船を降りてしまうことにしよう。……イヴォンヌさんや山田氏のほうは、あまり閉口させなくともすむように、なんとかうまくやれそうだわ」