Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.122 Zeichen · 29 Bildschirme
右手に、三浦半島のゆるい丘陵がつづいている。その遠い遠い沖合いに、一風変わった赤い帆のヨットが浮んでいる。原色版のナポリの風景などでよく見る『ファルファラ』という、蝶々のような恰好の帆をもった、この辺ではあまり見かけないヨットである。
この風変りなヨットは、きまった時間にどこからかやって来て、江の島の聖天島と稲村ヶ崎を底辺にする、正三角形の頂点で錨をおろし、二時間ほどそこに停っていて、それからまたどこかへ行ってしまう。
毎朝、十時から十一時半ぐらいまでの間、きまってこれが繰り返される。ひめじ釣りにしては時間がおそすぎるし、鮎子さんのいう通り水脈筋からもはずれている。いったいどんな目的で毎朝きまった時間に、きまったところに停まっているのか、それがわからない。このヨットを見かけるようになってから、これで五日になる。
芳衛さんが、結論をつける。これを倫理の先生の口まねでやってのける。
「……たぶん、海岸のザワザワした雰囲気が、諸君を刺激して、いささか神経質にしているんだと思います。……とにかく、諸君はあまり懐疑的です。……ことに、鮎子さんのごときは、何を見ても、怪しいとか、奇妙だとかいわれるが、鮎子さんが懐疑を持ったものをよく調べて見ると、怪しかったり奇妙だったりしたことはただの一度もないのです。