Japanische Klassiker mit Furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Lesen Sie キャラコさん von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.819 Zeichen · 36 Bildschirme
あたしは、すこし赧くなって、
「さっきも、申し上げましたが、あたくしは、そんなむずかしいことでおうかがいしたのではありませんでしたの。ただ、これをお届けしたいと思って……。ボクさんも、たぶん、そうありたいとねがっているのだと思いましたから」
そういいながら、ボクさんが詩を書きつけた紙片を、久世氏のほうへ押してやりました。
久世氏は、それを取りあげて、だまって読んでいましたが、間もなく投げ出すようにそれを卓の上に置くと、厳めしい咳払いをしながら、
「ちょっと、失礼します」
と、いいました。
立ってゆくのかと見ていると、そうではなく、ゆっくりと眼鏡をはずして、両手を顔にあてたと思うと、調子はずれな大きな声ではげしく号泣しはじめました。
ちょうど海綿でも絞ったように、涙が両手の指の股からあふれ出し、筋をひいてカフスの中へ流れ込みます。まるで、含嗽でもするような音をたてながら、いつまでも泣きつづけているのでした。
お兄さま。
久世氏は危ないところで間に合ったのですよ。あのまま役にも立たない意地っ張りをしていたら、それこそ、ボクさんは今ごろだいすきな星の世界へ行って、ひとりで遊んでいるようなことになっていたでしょう。