Japanische Klassiker mit Furigana
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ステッキ
ステッキ
寺田 寅彦
Lesen Sie ステッキ von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.740 Zeichen · 6 Bildschirme
自分たちの子供の時分には、田舎のおばあさんというものは、大概腰のところでからだが百二十度ないし九十度ぐらいに折れ曲がっていたもので、歩くにはどうしても杖を第三の足にしないと重力に対するつりあいがとれなかったものである。実に悲惨な格好をしていたものであった。木枯らしの吹くたそがれ時などに背中へ小さなふろしき包みなど背負ってとぼとぼ野道を歩いている姿を見ると、ひどく感傷的になってわあっと泣き出したいような気持ちになったものである。もういっそう悲惨なのは田んぼ道のそばの小みぞの中をじゃぶじゃぶ歩きながら枯れ木のような足に吸いついた蛭を取っては小さなもめんの袋へ入れているそういうばあさんであった。こうして採集した蛭を売って二銭三銭の生活費をかせいでいたのである。思い出すだけでも世界が暗くなるくらいで、杖という杖の中でもこういうばあさんの杖などは最もみじめな杖であろう。
親類のじいさんで中風をしてから十年も生きていたのがあった。それが寒い時候にはいつでも袖無しの道服を着て庭の日向の椅子に腰をかけていながら片手に長い杖を布切れで巻いたのを持って、そうしていつまでもじっとしたままで小半日ぐらいのあいだ坊主頭を日に照らしていた。