Japanische Klassiker mit Furigana
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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
Lesen Sie ズラかった信吉 (ズラかったしんきち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.656 Zeichen · 110 Bildschirme
森へ行こうと云った本心がわかった。絹靴下が欲しかったんだ。信吉は額に皺をこさえて頭を掻いた。
「……行かないの?」
「ああ。……養育料払う金もねえもん」
「……木槌野郎!」
ツと信吉の前を抜けアクリーナは、片手で灌木の枝を押しわけ明るい道へ出てしまった。
六
信吉はズボンの皮帯を締めながら、クシャクシャな髪をして、隣の室へ出て行った。
朝日が室へ射してる。
寝台の上では、長年グリーゼルの大きな図体の下に敷かれて藁のはみ出した布団が捲り上げられたっぱなしだ。埃をかぶったまんま引っぱり出されてる藤づる大籠。カギのこわれた黄色いトランク。得体の知れないボール箱だの新聞包み。
取り散らされた家財の横で床板がめくられてる。
信吉はゆっくりそこまで行って、トントンと踵で嵌めこもうとした。
嵌らない。
窓前の油布のかかったテーブルに、グリーゼルがその上で食物を拵えてた石油焜炉とコップが置いてある。
いつもは、通り抜けてばかりいたグリーゼルの室を、そっちこっち歩きまわって見た。
昨夜信吉が「文化と休み公園」から帰って来たのは十一時過だった。
果汁液を飲みすぎたか、腹の工合が変なんで便所へ入って居睡りこきかけてたら、階段をドタドタ数人が一時に登って来る跫音がした。