Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
Cは、無言で、ポケットの中の球を金貨のようにジャラジャラ鳴らしながら、とぼとぼと行き過ぎて行った。
「さあ、これで俺はいよいよ俺ひとりの天地になった。――ベリイ、ブライト!」
僕は、薄明の彼方に消え失せる彼らの姿を見送って、丘の頂きで双手を挙げて絶叫した。
昼間は野山を駆け廻って糧食を求め、夜は炉傍に村人を集めて爽快な武者修業談を語ろう。僕は、「思惟の思惟」に依って橄欖山を夢見る哲学者を憐れみ、ヂオヂゲネスの樽をおしている詩人を軽蔑し、統一のための統一に無味無色の階段を昇り降りし続けている物理学生と絶交して快哉の冠を振った。そして彼らの、どんな憂目を見るであろう旅の空を想うのが痛快であった。
こんな想いに有頂天になった僕は、ホップ・ステップで山を駆け降り、Aのいわゆるマーメイドの前に来かかると、
「あら、マキノさんだわ。」
と叫んで、あの酒注女が駆け出して来て僕の行手を塞いだ。そしてやや暫く僕の姿を不思議そうに眺めた後に、
「そんな恰好で、あたしの眼をごまかして通り過ぎようとしたって駄目よ。」と甘えながら僕の胸に凭りかかった。……「よう、どうしたのよ、いつものように折角お迎えに出たあたしを、抱きあげて早く店の内へ連れてって頂戴よ。