Japanische Klassiker mit Furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.321 Zeichen · 54 Bildschirme
僕は鍾馗につかまった小鬼のように吃驚りした。七郎丸はそのままオイオイと声を挙げて泣くのであった。
「七郎丸!」
と僕も、理由も知らずに胸が一杯になって叫んだ。「誰がお前のような善良な人間をそんなに悲しませたんだ。事情は一切聞かないで好い。悪人の名前だけをいえ。」
「違う違う。」
彼は、涙をのんで辛うじていい放った。「七郎丸の旗誌を再び舟に立てることが出来る幸運に俺は廻り合ったんだ。」
――魚場の納屋の屋根に魚見櫓というものがある。舟を持たない七郎丸は久しい前からこの展望台で観測係を務めていた。稀には舟を借りて沖へ出かけることもあったが、舟主との間が面白くないので、彼は大方この展望台に籠って、天候の次第に依って幾通りかの旗をかかげたり、魚群の到来を村人に知らすサイレンのスウィッチを握ったりして、遣瀬なく腕を扼していた。僕のCは、実際には「落下の法則」を実験していたわけではなく、この観測室に来ると七郎丸の仕事の手伝いをしていたのであるが、例えば望遠鏡で見張りしている彼が、
「来たぞ、合図だ!」
と叫ぶと、僕はサイレンのスウィッチを下す、村人が涌き立つ、海上には忽ち目醒しい活劇が捲き起る。