Japanische Klassiker mit Furigana
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ゼーロン
ゼーロン
牧野 信一
Lesen Sie ゼーロン von 牧野 信一 (まきのしんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.533 Zeichen · 29 Bildschirme
彼は実に気短かな男で、経川と私が少しばかりの酒代の負債が出来たところが、いつかその支払命令に山を越えてアトリエにやって来た時丁度経川の労作の「マキノ氏像」が完成して二人でそれを眺めていると、
「馬鹿にしている、こんなものをつくりあがって!」と私達を罵り、思わず癇癪の拳を振りあげてこのブロンズ像の頭を擲りつけて、突き指の災に遇い、久しい間吊り腕をしていたことがある。今日も人をとらえて私達の無責任を吹聴しているのだろう。
――「おやッ井戸換えの連中がこっちを見上げて何か囁き合っているぞ!」
私はギョッとして、慌てて顔を反対の山の方へ背けた。漸く、あの森が、丘の下に沼のように見えるあたりまで来ていた。幽婉縹渺として底知れぬ観である――不図耳を澄ますと、森の底から時折銃声が聞えた。二三発続け打ちにして、稍々暫く経つと、また鳴る。
私は更に不気味に胸を打たれた。あの団長の喫煙ではないかしら? と思われたからである。理由を知らぬ村人は猟師の鉄砲の音と思っているが、私は知っている――あの団長はかような好天気の日には却って身を持ち扱って、無闇に煙草を喫す習慣である、そんな時には彼は非常に神経質な喫煙家になって、一発で点火しないと、わけもない亢奮に腕が震えて不思議な苛立ちに駆られるのであった。