Japanische Klassiker mit Furigana
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デパートのこうけいり
デパートの絞刑吏
大阪 圭吉
Lesen Sie デパートの絞刑吏 (デパートのこうけいり) von 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.242 Zeichen · 23 Bildschirme
今まで何事か考えていた係の男が、急に口を切ってこう言った。
「弁が開いていた?」
驚いた様に顔を上げて訊き返した喬介は、暫く考え込んでいたが、
「ほう、非常に有力な証拠だ」
と、独りで呟くと、再び元の姿勢に戻って、拡大鏡でハンドルの表面を調べながら、係の男に言葉を掛けた。
「君は今朝グローブを嵌めずに此処へ触れたね?」
「ええ、最初バルーンを降ろす時には、修繕するために急いでいましたので――」
それから喬介は、首飾を司法主任の手から借り受け、ハンドルの上に検出された指紋と、首飾の指紋とを較べ始めた。私も喬介の横へ屈み込んで、両方の指紋を熱心に比較して見た。が、二通りの指紋は、各々全く別個のものである事に私は気附いた。
「ね。君も気附いたろう? ほら、このハンドルの上には、この人の指紋以外に、この首飾の指紋、つまり被害者の指紋は一つも見られない。これでよろしい。さあ、バルーンを静かに降ろして下さい」
喬介の言葉に、係の男は一寸不審気な表情を見せたが、間もなく作業手袋を嵌めて、捲取機のハンドルを廻し出した。
一呎。二呎。――広告気球は静かに下降し始めた。
喬介は拡大鏡を、捲き込まれて行くロープに近附けて鋭い視線をその上に配っていた。