Japanische Klassiker mit Furigana
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ニッケルのぶんちん
ニッケルの文鎮
甲賀 三郎
Lesen Sie ニッケルの文鎮 (ニッケルのぶんちん) von 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.523 Zeichen · 37 Bildschirme
先生は相変わらずじっとしていらっしゃるでしょう。つかつかと先生のお傍へ寄って行ってね。肩へ手をかけて起こそうと思ってふと頸の所を見ると真っ黒なものがベットリついているの。よく見るとそれが血なんでしょう。あたし内野さんが抱き留めてくれなきゃ、きっとあそこへ引っくり返ったに違いないわ。
『これでやったんだな』下村さんがそういって先生の側へしゃがんだので、見ると血のついた文鎮が足許の所に落ちていたわ。この文鎮というのは先生がフルスカップって、そら大きな西洋の罫紙ね、あれを広げたまま押さえる為に特別にお拵えになったので、長さ一尺以上あるでしょう。ニッケルなんですって。あたし掃除をする時によく持ったけれども、そりゃ重いもんよ。いつだったか先生が冗談に『八重、これで力一杯ぶたれると一思いだよ』と仰しゃった事があったけれども、ほんとにこれでぶたれてしまいなすったんだわ。
下村さんも内野さんも妙な人よ。あたしに何も触っちゃいけないといって、二人で一生懸命に、手袋をはめた手でそこいら中引っ掻き回して、といっても、そりゃ丁寧なのよ。ちゃんと元の通りにして置くんですものね。