Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.878 Zeichen · 26 Bildschirme
「うわア」と一声、本能的に逃げ出そうとすると、タヌは、優しく後ろから抱きとめて、
「コン吉、嬉しいでしょう。嬉しいでしょう」と、軽くコン吉の背中を叩するのであった。
「念を入れるようだが、われわれがニースまで自動車旅行するというのはこの車のことなのかね」と、コン吉が恐る恐るうかがいを立てるとタヌは、
「そうですとも」と、流し目で愛しげに自動車を見やりながら、
「とにかく、車に乗りたまえ。そんなところに愚図愚図しているとまた風邪を引くよ」と、車の方へコン吉を押しやろうとする。
「しかし、あの中へ入っても、一向戸外の気候と変りはないというわけは、この自動車には幌も雨除けもないのだからね。僕はこういう状態のままでニースまで、一〇八八粁もゆられて行くのはどうも心もとない気がするんだ。もし、途中で雨または雪などが降ったならば、一体どうすればいいのだろう」
「わかってる。ほら、あの隅んところに大きな蝙蝠傘を用意しておいたから、あれを拡げると、雨だって風だって防げるわけよ」
「いや、結構です。でもネ、僕はこの通り毛布の下に寝巻を着ている始末だから、ちょっと上まで行って……」