Japanische Klassiker mit Furigana
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ノンシャランどうちゅうき
ノンシャラン道中記
久生 十蘭
Lesen Sie ノンシャラン道中記 (ノンシャランどうちゅうき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.682 Zeichen · 27 Bildschirme
のホテルを出発。ボッソン氷河の横断にとりかかったのは翌朝の午前三時。
見あぐれば淡い新月に照らされて、碧玉随のような螢光を発し、いまにも頭の上に落ちかかろうとする怪偉な山容は、これぞアルプスの大伽藍モン・ブランの円蓋。
ガイヤアルのあとに続きますのは狐のコン吉。小山のようなルュック・サックを背中にしょい、納めようのない鉄鍋は、やむを得ずこれを頭にかぶり、フライ・パンとマンドリンを腰の廻りにくくりつけ、右手には氷斧、左手には薬鑵、それでも足らずに首からは望遠鏡と肉ひき機械を吊し、洗濯板のように、高低ただならぬ凍った波頭の上を、漂うごとく流るるごとく、寒風の中に汗を流し、呻吟の声を発して行進する。タヌの方は、ぐるぐると巻きつけた登山綱の中から目だけを出し、愛用のハンド・バッグを小脇にかかえ、楚々たる蓮歩を運びたもう様子。
氷河には至るところに青黒い口を開けた地獄の入口がある。この亀裂に落ちたが最後、二度とこの世の光りは見られない。ガイヤアルは亀裂の上にかかった薄い氷の橋を、ほじくり返しかき廻し、雪か氷か確かめては渡ってゆく。重荷をしょったコン吉にとっては、これは誠に薄氷を踏む思い、踏み破ったらこの世からお暇、助けたまえ、神々と、お尻をもたげ、マンドリンの空鳴りにも胆を冷やしながら、虫が這うようにしてまかり通る