Japanische Klassiker mit Furigana
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プウルのかたわらで
プウルの傍で
Lesen Sie プウルの傍で (プウルのかたわらで) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.843 Zeichen · 34 Bildschirme
そこは坂の中途で、アカシアの街路樹が少し断れて、暗い街燈の立っている所であった。彼は今度こそ、落着いて相手を見ることが出来た。
女は小柄であった。まだ子供だろうと彼は思った。描眉毛もうすく、鼻もうすく、脣もうすく、耳も肉がなく、小さかったが、大きな朝鮮人らしくない、くりくりした眼附が割にその顔を派手にしていた。下袴はうすい紅で、右の腰のあたりで、大きく蝶結びに結ばれていた。安物らしくピカピカ光った上衣の袖から、華奢な小さな手が出ていた。
ボタンを渡すために女は三造の手を求めた。彼は手を出した。少女はボタンを置き、そのまま自分の手を彼の手の中に握らせた。柔かく冷たく、しめり気のある感触であった。少女はその姿勢のまま、じっと真直ぐに三造の眼を見上げて言った。
「キナサイ。」
それは少しも媚を含んだ態度ではなかった。あたりまえのことを請求するような態度であった。三造は、妙な混乱を――先刻のとはちがった種類の混乱を感じた。彼は、彼の手の中にある少女の小さな柔かい手を強く握って、「さよなら。」と言った。「サヨナラ、イヤ。」と、とっさに少女は、そう反射的に言いかえして、彼の手をしっかり握った。