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Japanische Klassiker mit Furigana

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ボニンとうものがたり

ボニン島物語

久生 十蘭

Lesen Sie ボニン島物語 (ボニンとうものがたり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.772 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

久太夫の業物は、先年、糊口に窮して米一斗と替え、鞘の中には摺箔の竹光しかおさまっていないことを知っている。久太夫の籠手に生気が動くのを見るなり、

「田中、抜くなよ、物笑いになる」と後から声をかけたが、久太夫は、

「よし、斬ってやる」といいながら竹光を抜き、ひと打ちとばかりに振りかぶった。

赤木屋の手代は、あっと叫んだが、逃げると後から斬られると思うので、逃げることもできない。

「もし、この通り、このとおり」と手をあわせながら、中腰になって久太夫のまわりを廻って歩く。後へ退くどころか、ぬかるみに足をとられ前方へのめずったりする。久太夫としては、相手が身近に来れば、刀をふりおろさぬわけにはいかないが、三十人からの手代どもが、遠巻きにしてじっと成行を注視しているので、それもできない。

いかにもよく似せてあるが、竹光は竹光、斬ることもできなければ、斬れるわけのものでもない。赤木屋の手代が切尖の届くところへよろけてくると、それとなくうしろへ身を退らせて、三尺ほどの間隔を保ち、つくりつけの人形のように八双に刀をふりかぶったまま、荒い息をついている。

赤木屋の手代のほうは、いかに貧窮したとはいえ、久太夫ほどの使い手が、竹光を差していようなどとは思わない。