Japanische Klassiker mit Furigana
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マダムさだやっこ
マダム貞奴
長谷川 時雨
Lesen Sie マダム貞奴 (マダムさだやっこ) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.999 Zeichen · 53 Bildschirme
う。そうした人が金銭のことから他人がましくなろうはずはない。もしなったとすれば、それは夫妻の内部から破綻が、表面にまで及ぼしてきて、物質関係まで他人がましくなったのだと思わなければならない。その折はすでに愛情は冷却して、そのくせ女の方は、あまり高価な、かけがえのない犠牲を払って来た若き日の、あの尊とかりし我熱情の、徒らに消耗された事を思い嘆くあまりの、焦燥から来た我執とみなければなるまい。
けれど、もし仮にそうであったとすれば貞奴の思違いであった。彼女は夫を助けたのであろう。夫のために犠牲として、夫の事業の傀儡となったのであろう。けれどそれは最初のことで、運命は転換した。演劇に新派を建立し、飜訳劇に彼地の風俗人情、思想をいちはやく紹介した川上の事業はとにかく成功した。かげでこそオッペケペなぞと旗上げ当時を回想して揶揄するものもあったが、演劇界に新たな一線を劃すだけのことを川上はやり通した。そして、それと同時に、川上の成功に比して劣らぬ地歩を貞奴もしめたのである。艱難に堪え得た彼女の体が生みだした成功と名誉である。けれど、けれど、けれど、其処に川上という具眼者がなくて彼女の今日があったであろうか。