Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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モスクワのつじばしゃ

モスクワの辻馬車

宮本 百合子

Lesen Sie モスクワの辻馬車 (モスクワのつじばしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.305 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

強い勢いで扉が内側からあけられた。ともしびがサッと広く歩道へさした。が、そこから出て来たのは案外小さい一人の女だった。

歩道に沿って二台辻馬車が停っている。後の一台では御者が居眠りしていた。前の御者台に黒い外套を着て坐っていた御者が扉の音で振向いた。馬具の金具が夜の中にひかった。

小さい女はひどく急いでいる風で立ち止まるのも惜しそうに、歩道の上から御者に叫んだ。

――ひま?

――何処へ行きますかね?

――サドゥヴァヤ! ストラスナーヤの角とトゥウェルスカヤ六十八番とへよって、二ルーブリ!

――よろしい、行きましょう。

――二ルーブリ! いい? それで。

御者はほとんど面倒くさそうに髭のある口の中で「よろしい、よろしいとつぶやいた。外国女だ。何度繰返したってまともなロシア語の音はどうせ出やしないんじゃないか。そう云っているような調子である。御者特有の横目で日本女が先ず片手にさげていた一つの新聞包みを蹴込みへのせ、それから自身車へのるのを見守り、弾機が平衡を得たところで、唇を鳴らし手綱をゆるめた。

冬凍った車道ですべらないようにモスクワの馬に、三つ歯どめの出た蹄鉄をつけている。