Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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モスクワのつじばしゃ

モスクワの辻馬車

宮本 百合子

Lesen Sie モスクワの辻馬車 (モスクワのつじばしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.305 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

――お前さん、ロシア人だろう? 馬車にのっかってる人間が寄ると云ったら、寄り道にきまってることが分らないの?

暫く黙って御者は、やや弱く。

――いや何とも云わなかった。

それから急に大仰に体の両側へ絶望的な手をひろげ、通行人に訴えようとするようにあたりを見廻しながら、

――こりゃ何事だ!

と叫んだ。

――あんたは私の馬車にのって来た、それだのにここまで来ると払わないって云い出す! そんな話ってあるもんじゃないじゃないか。

日本女の黒い眼が、焔の下の石炭のようにきらきらしだした。馬車へ再び足をかけながら短く、彼女は命令した。

――さ、巡査のところへ行こう。

御者は同じ様に挑戦的に応じた。

――行こう!

御者がさとらぬようにそっと口をあけて、日本女は何とも云えないおかしさでひとり笑った。だって、一体これを何と解釈すべきだろう。日本女をのっけた馬車は、今七時二十分、人の出盛っているトゥウェルスカヤ通りを逆にもときた方へ向って動いている。車道の真中には恐ろしい火山でも出来たようにぴったり歩道際へすりついて、四本の馬の脚でのろく歩けるだけのろく練っている。