Japanische Klassiker mit Furigana
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モスクワのつじばしゃ
モスクワの辻馬車
宮本 百合子
Lesen Sie モスクワの辻馬車 (モスクワのつじばしゃ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.305 Zeichen · 17 Bildschirme
新ソヴェトの滑らかなアスファルト道の上で、そういう蹄は高く朗かに鳴った。十一月中旬の、まだ合外套も歩いてる午後七時の往来に小さい籠を持ったリンゴ売が出ている。芸術座小舞台へ入る門の前で、女が――プログラム! プログラム、十カペイキ!「我等の青春」のプログラム、十カペイキ!
気ぜわしい、金属的な、何だかひもじいような声だ。むき出しな頭で片手にプログラムの束を抱えそうやって叫んでいる女もその他の通行人も馬車の上から見るとみんな宵のくちの濃い陰翳と不揃いなともしびの中にあって、一つ一つの目鼻だちは見分けられない。
日本女はいつもは踵の低い茶色の靴をはいてトゥウェルスカヤ通りをむさぼるような眼付で歩いていた。彼女は今同じ坂道を馬車にのってゆっくり登って行きながら、三年の間に自分が何処ここを歩き、その度にいろんな違った心持を抱いて歩いてたかということを、はっきり感じた。どのソヴェト市民だってそんなに馬車には乗りゃしない。だから日本女だってやはり電車に乗るほど馬車にはのらなかった。今夜は特別だ。だんぜん特別だ。何故なら、彼女にはすることがうんとある。第一この膝の上に抱えている不恰好にふくらんだ書類入鞄の中から二本の瓶を出してストラスナーヤの角の家へおき、次に新聞包を六十八番地へ必ず置き、三十分後には「勇敢な兵卒シュウェイク