Japanische Klassiker mit Furigana
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ランスきこう
ランス紀行
岡本 綺堂
Lesen Sie ランス紀行 (ランスきこう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.777 Zeichen · 12 Bildschirme
栗の花はもう散り尽して、その青い葉が白い土のうえに黒い影を落している。木の下には雛芥子の紅い小さい花がしおらしく咲いている。ここらへ来ると、時々は人通りがあって、青白い夏服をきた十四五の少女が並木の下を俯向きながら歩いてゆく。かの女は自動車の音におどろいたように顔をあげると、車上の人達は帽子を振る。少女は嬉しそうに微笑みながら、これも頻りにハンカチーフを振る。砂煙が舞い上って、少女の姿がおぼろになった頃に、自動車も広い野原のようなところに出た。
戦争前には畑になっていたらしいが、今では茫々たる野原である。原には大きい塹壕のあとが幾重にも残っていて、ところどころには鉄条網も絡み合ったままで光っている。立木は殆どみえない。眼のとどく限りは雛芥子の花に占領されて、血を流したように一面に紅い。原に沿うた長い路をゆき抜けると、路はだんだんに登り坂になって、石の多い丘の裾についた。案内者はここが百八高地というものであると教えてくれた。自動車から卸されて、思い思いに丘の方へ登ってゆくと、そこには絵葉書や果物など売る店が出ている。ここへ来る見物人を相手の商売らしい。