Japanische Klassiker mit Furigana
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ラしのふえ
ラ氏の笛
松永 延造
Lesen Sie ラ氏の笛 (ラしのふえ) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.706 Zeichen · 18 Bildschirme
「ミスタ、ラオチャンド……」と、私は自分をも不快にさせる程な反響を持った声で、呼んで見た。
答えは極く低声に、ベッドの向う側から湧き起った――全く湯気の如く落ち着いた調子で、下方から浮き上って来た。私は直ぐその方向へ回って見た。そして、更に新らしい驚きで、自分を戦慄せしめた。(当時、私は若い新参者で、未だ、病院内の一切の事に無経験だったから、精神は白紙のように傷き易く、印象は墨の斑点のように明瞭であった。)
外でもない、友人ラオチャンドは板の間へ一杯に青色のシャツを敷き広げ、その上へ蔽いかぶさって、二銭銅貨五個分程の血を、丁度シャツの背筋の所へ吐いて居たのである。
彼れは哀訴の心を籠めた眼差しで、私を下から見上げ、次に、鼻孔へ迄も回った血液を口中へと戻すため、鼻をすゝった。
四つ這いになった彼の長い身体、白い靴下の穴からのぞく、薄黒い足の裏、血に染って赤くなった大きい門歯、苦痛の涙に濡れた長い睫毛――それら全体は、より所もない孤独の感じで、細かく波打っている如くであった。
三
翌朝は殊に麗かな晴天であった。
私は廊下に漲ぎる輝かしい光線の為めに、眼球の表面を刺激された挙句、網膜に斑らが出来たような不快な感じを抱いて、再びラオチャンドの室へと這入って行った。