Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
リラのてがみ
リラの手紙
豊田 三郎
Lesen Sie リラの手紙 (リラのてがみ) von 豊田 三郎 (とよださぶろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.702 Zeichen · 30 Bildschirme
久能が結婚しないよといっても平気でいて、現実の行為の世界でずんずん久能をひきずっていく青江には勝てない、ああ俺はどうしてこんなにうわべの、青江の告白などという言葉ばかりを捜しているのだろう。今だにひたすら青江を信じたい気持が――俺は青江から純粋に愛されていたのだという意識や、記憶を持ちたい感情が、久能の胸の奥に恋々と居坐っていた。そしてそれ等を背景に置くと、青江の、今まで厭わしかった点が、急に眼を射るように輝き、久能を魅して来、到底青江から離れることは出来ないと思わせた。
菊崎に別れて、久能は古本屋に立寄り、大事にしていた原語の詩集類を僅かな金に代えて売り払った。職に就けないでいる久能は蔵書を医療費にあてていた。それも元より多くはないので、一番愛惜して後に残っていた詩人達の本を手離した瞬間は苦しかったが、青江のいる方へ歩いていく足はひどく軽かった。久能がアパアトの曲り迂った楷段を登っていって青江の部屋の扉を押すと鍵が降りていた。今度出ている会社は随分退けが遅いのだなと、彼は懐から鍵を取り出した。その鍵を彼は何度、河の中へ捨てようか旧い記憶を一切捨てて明るい気分に帰ろうかと決心しかけても、病んでいるのが幽鬱であればある程、青江が恋しくなって、隠しの中にしっかと蔵っていた。