Japanische Klassiker mit Furigana
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レモンのはなのさくおかへ
レモンの花の咲く丘へ
国枝 史郎
Lesen Sie レモンの花の咲く丘へ (レモンのはなのさくおかへ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.016 Zeichen · 142 Bildschirme
少年 いいえお姉様! 悲しいことでもないのよ。ただ忘れられないことなのよ。ええ、ええ、少しは悲しいことだけれど。……それはね、私のほんとに小さい頃のお話よ。或る日私はね、揺籠に乗ったままお庭の何処へ置かれていたのよ。私の頭の上には広い広い青い幕が丸く一ぱいに広がっていたのよ。
女子 それは晴れきった青空でしょう。
少年 彼方からも此方からも可愛い声で、私を呼んだり挨拶をしたりして、美しい色の間を飛び廻っているものがあるの。
女子 小鳥が花の間で啼いていたんですわ。
少年 私はじっと黙ってそれを聞いていると、いい香りの風が私の顔をさすって行くのよ。……私は母指を口の中に入れて、それをチュウチュウと吸いながら、眼を細めて呆然としていたの、けれども私は寂しかったのよ。何故ってね、一人も私の傍に人がいないんですもの、いつも私を眠らせたり、やさしく頬を吸ったりして、可愛がって下さった女の人も、その日に限っていないんですもの。私は一人でそのお庭に棄てられていたんですの、お姉様。
女子 それからどうしたの。
少年 その中に急に私は泣き出したの。
女子 どうしたんでしょうねぇ。