Japanische Klassiker mit Furigana
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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
Lesen Sie ヰタ・セクスアリス (ウィタ・セクスアリス) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.941 Zeichen · 119 Bildschirme
金井君は初め筆を取ったとき、結婚するまでの事を書く積であった。金井君の西洋から帰ったのは二十五の年の秋であった。すぐに貰った初の細君は長男を生んで亡くなった。それから暫く一人でいて、三十二の年に十七になる今の細君を迎えた。そこで初は二十五までの事は是非書こうと思っていたのである。
さて一旦筆を置いて考えて見ると、かの不必要な衝突の偶然に繰り返されるのを書くのが、無意義ではあるまいかと疑うようになった。金井君の書いたものは、普通の意味でいう自伝ではない。それなら是非小説にしようと思ったかというと、そうでも無い。そんな事はどうでも好いとしても、金井君だとて、芸術的価値の無いものに筆を着けたくはない。金井君は Nietzsche のいう Dionysos 的なものだけを芸術として視てはいない。Apollon 的なものをも認めている。しかし恋愛を離れた性欲には、情熱のありようがないし、その情熱の無いものが、いかに自叙に適せないかということは、金井君も到底自覚せずにはいられなかったのである。
金井君は断然筆を絶つことにした。
そしてつくづく考えた。世間の人は今の自分を見て、金井は年を取って情熱がなくなったと云う。