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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひとつのできごと

一つの出来事

宮本 百合子

Lesen Sie 一つの出来事 (ひとつのできごと) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.024 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

借りた彼女は、また借りものの一部分でもを又貸しして、払う金を浮かばせようとする。まるで鼬(いたち)ごっこのようである。思いつかないような遣繰りをする周密さには驚ろかされるけれども、そんなにもセカセカと気を配らなければ生きても行かれない世の中なのかという考えは、心を暗くする。何かしきりに耳を傾けている彼に、私は独言(ひとりごと)のように呟いた。

「そんなに敏捷(スマート)に立ち廻らなければ暮せないのかしら――」

「さあ――……」

すぐ後を続けて何か云おうとした彼は、急に不愉快な表情をしていずまいをなおした。

「御覧なさい、あんなことをいうからユダヤ人は人に嫌われるんだ」

「何が?」

「下の女がね、上はゆっくりしているのだから若しこっちの工合が悪かったら、いくらでも三階を使えば好いなどと云っているんです」

今まで漫然と筆を運びながら聴き流していた私は、この言葉で思わず手を止めて彼を見た。

「こっちを使う? こっちの何を使うというの?」

「さあ何だか――たぶん顔を洗うところででもあるでしょう」

「それじゃあ困るじゃあありませんか、どこの誰れか分らない者に、そう勝手に出入りされては不安心で困るわ」