Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつのめばえ
一つの芽生
宮本 百合子
Lesen Sie 一つの芽生 (ひとつのめばえ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.627 Zeichen · 29 Bildschirme
英国の父から送ってくれた、美くしい飾珠(かざりだま)の一杯ついた馬具をつけた彼が、小さい銀の鈴を鳴らしながら「おんま、ハイチハイチ」と這って行く。
彼が運転手になった、屏風(びょうぶ)箱の電車にのって、私共は銀座へ行った。
「軍艦の、軍艦の、軍艦のハ――」
木作りの軍艦に紐(ひも)をつけて、細い可愛い声で歌いながら、カラカラカラカラと廊下を往復している彼、その時代の私達姉弟の思い出が、あまり楽しいので、いとおしいので、私は辛抱しよう、しようと思いながらつい涙をこぼしてしまった。
それからそれへと、果もなく延びて行きそうだった追憶は、彼の激しい喘鳴のうちから、明瞭に聞かれた「どこへ」というつぶやきによって破られた。
明らかに疑問のアクセントを持った、「どこへ」というあとについて聞きとれなかったもう一つの響きが続いた。
「どこへ?……」
自分は、驚きとともに反問するように彼の顔を見た。
「どこへ?……」何の意味があるのだろう。
すっかり青ざめた額一面に、膏(あぶら)が浮いて寂しく秋の日に光っている。
「どこへ?……」自分はこの言葉から、無数の思いを繰り出せる。