Japanische Klassiker mit Furigana
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いちのくらさわ
一の倉沢
久生 十蘭
Lesen Sie 一の倉沢 (いちのくらさわ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.237 Zeichen · 13 Bildschirme
正午のラジオニュースで、菱苅安夫は長男の安一郎が谷川岳で遭難したことを知った。パアトナーは駒場大山岳部の大須賀というひとだったらしい。菱苅は安一郎が谷川岳へ行くことも、そんな男とパアティになったこともぜんぜん聞いていなかった。
食べかけていた弁当箱をおしやると、菱苅は登山口になっている土合駅の駅長に電話をかけた。
「お忙しいところ、申しわけないのですが、だいたいの状況を伺いたいと思いまして……遭難前後に、雨が降りましたでしょうか」
「午後二時から八時くらいまでの間に、相当な降雨がありました。土合で七〇ミリほど……」
「気温は?」
「気温は土合で十三度……今年は雪線が下っていますから、尾根に近いところでは二、三度……ひょっとすると氷点ぐらいまで下ったかもしれません……それで、あなたは?」
「菱苅の父です」
「ご承知だろうと思いますが、アルプスなどとちがって、こちらには山案内人というようなものはいないのですから、できるだけ早く救援隊を送っていただきたいので……土樽の山の家の管理人に、尾根筋を辿って探してもらいますが、それ以上のことは出来かねますから」
「十四時三十分の長岡行でそちらへ参ります」